kadokichi012004-10-11


第12回日本山岳耐久レース(長谷川恒男カップ) 10月10日・11日


【コース紹介】
五日市中学校〜今熊神社〜入山峠〜市道山(いちみちやま)〜醍醐丸〜生藤山(しょうとうさん)・三国峠(さんごくとうげ)〜熊倉山〜浅間峠(せんげんとうげ・第一関門22.66k地点)〜 土俵岳〜丸山・笛吹峠(うずしきとうげ)〜西原峠(さいばらとうげ)〜三頭山(みとうさん)〜鞘口峠(さやぐちとうげ)〜風張峠(かざはりとうげ)〜月夜見(つきよみ)第二駐車場(第二関門42.09k地点)〜御前山(ごぜんやま)〜大ダワ〜大岳山(おおたけさん)〜御岳山(みたけさん・第三関門58.00k地点)〜日の出山(ひのでやま)〜五日市中学校(71.5k)  


【はじめに】
 本格山岳レースとして有名になったこのレースは今年で連続9回目の参加(第4回から参加)となる。はじめて出場した大会では、雨のため、坂を下ることができず、第二関門でリタイヤ。あと1回、足の指の骨を折ったまま出場して、第一関門でリタイヤしたことがある。ほかは完走しているが、すでに完走証も何枚か紛失しているありさまで詳しい記録は忘れてしまった。
 記録ははじめて完走した第5回大会が15時間弱。あと1回途中で寝てしまって15時間台があるが、だいたい13時間半くらいで安定していた。しかし昨年は天候の好条件とシューズをレオナ・ディバイド(モントレイル)に変えたことで、記録が1時間以上も大幅アップ。12時間4分台を記録した。今年はその記録維持あわよくば更新を目指して、苦手の登り練習を多く行ってきた。はたしてその効果は表れるのか…。


【大会前日】
 大会前日は首都圏は台風直撃。当日は台風一過が期待されたが、地面はかなり濡れているだろうことが予想された。8月のエクステラで負傷した肘(剥離骨折)のこともあって、極力転びたくないことや靴の中が濡れてしまうのが、いやだったので、思い切って上記レオナのゴアテックス版・ハリケーンリッジ(モントレイル)を買った。ゴアッテクスの分、重量はレオナよりかなり重い。値段も高かったが、この大会のために、思い切って買ってしまった。


【モントレイルのシューズ:レオナ・ディバイド】
 大会レポートからは脱線するが、ここでモントレイルのトレイルランニングシューズについて。上記でも紹介したレオナ・ディバイドは昨年・一昨年と本大会を制した石川選手が愛用しているということで、ランナーの間に一気に広まったシューズ。トレイルの大会でこのシューズを履いている人は多い。その特長は、分厚いソールと底面の鋸状のアウトソールである。まず、ソールの厚さはほかのメーカーのトレイルシューズと比べると一目瞭然である。そして結構固い。これは多分、ユーザーの対象が体重のあるアメリカ人で、アメリカでは、砂漠など固い岩盤を走る100マイル(160k)のロングディスタンスのレースが中心であることなどから設計されたのだと思う。さらに鋸状のアウトソールは岩場、土の双方でグリップが強く、滑りにくい。日本人が使うには、若干重いと思う。しかしロングディスタンスではその安定性が走りを安定させてくれるようだ。特に奥多摩のような岩場の多い地形では岩の突き上げから足を守ってくれて、疲労を軽減させてくれる。下りで激しく足をつくときにも有効だ。アウトソールのグリップの高さも下りで威力を発揮する。つまり下りで激しく足をついてスピードを上げる人には有効に働くのだ。その点が私に向いていたのだと思う。いくら天候がよかったにしても、それまでの記録を1時間以上も更新してしまったのは、このシューズが自分によく合っていたからだ。
 逆に登りが得意で下りはあまりスピードを上げない選手には、このシューズは重く感じるはずだ。実際女子のトップレベルの選手は登りでがんばる人が多いので、普通のマラソンシューズを履いている人が多い。
 ということで、今やトレイル界のターサー状態になっているレオナ・ディバイドだが、私が思うには、安全で完走を目指す人には安定性があって最適のシューズ。これで速く走ろうという人の場合は、下り第一で考える人に向いているのではないかと思う。石川選手も下りが大得意ということだ。大会初優勝のときも第二関門から第三関門の下りメインになってきたところで、それまでのトップ選手を抜いていたことからもそれがうかがえる。


【スタート前】
 当日は9時過ぎに五日市中学校に到着。体育館が男子更衣室になっている。すでに壁際の特等席は早く来た選手に占拠されており、体育館の奥側にシートを引いて陣取る。終わった後、朝まで安眠するためにも奥側を陣取ることは大切である。体育館なので、足音が響くのだ。選手は絶えず帰ってくるので、なるべく足音が少ない奥の方がよい。今年から隣の小学校の体育館も控え室になったが、トイレや水道がなく、やはりいままで通り中学校がよい。11時くらいにアロハ氏とも合流、中学校の体育館はすでに一杯で、中はかなり蒸し暑かった。
 受付で、持ち物チェックを受けた後、アートスポーツなどの出店をチェック。ここで、スーパーフィートというインソールを発見。前から使って見たかったが、安く売っていたので思わず買ってしまう。どうも気分は浪費モードである。お店の人の話だと使い慣れないと内転筋が痛くなったりするということだったが、すぐに今日使ってみたくなり、新品のシューズにセットする。足周りはすべて新品、試し履きもしていない。そしてもちろん、そのつけは後でやってくることになる。本来の中敷きは万が一を考えてリュックに詰め込んだ。


【当日持ち物】
シューズ:ハリケーンリッジ(ゴアテックス製・モントレイル)
食料:パワージェル8本(約800カロリー)スポーツバー4本(約1100カロリー)ソーセージ少々。
服装:半袖ジップ付シャツ ショートスパッツ パンツ(短パン) ハイソックス 帽子 ハンドタオル 軍手(掌ポチポチ付)泥よけのゲイター。
服装予備:長袖ジップ付シャツ ゴアテックスカッパ(上のみ)
ライト:ペゼル製mio5 (LEDと白熱灯のミックス)
水:2リットル(ハイドレーションシステム)
そのほか:シューズの中敷き

 
 先に結果からいうと、食料はカロリー的には十分だったが、カロリーだけでは計算できないものがあることを思い知らされた。まずスポーツバーはヌガー系のもので、なかなか口になじまない。甘すぎる。パワージェルのエネルギーは1時間くらいですぐに使い果たしてしまう。これらの補給のためには水が結構必要。また塩分の不足。そのためかどうかはわからないが、途中からずっと足がつった状態だった。
 服装でパンツ(短パン)というのはユニクロの海水パンツでスパッツの上に履いた。このパンツが結構撥水性があって、シャツの汗で下のスパッツまで濡らすことを遮ってくれた。なかなかのすぐれものであった。軍手はやはり便利だった。特に滑り止め付というのがよかった(途中で片手落としたけど)。泥よけのゲイターも必需品。石ころや土も入ってこないし、今年は靴の中が濡れることも防いでくれた。予備の服装は使わなかった。雨は結構降ったけど、寒いとはまったく感じなかった。立ち止まると自分でも体から湯気が出ているのがわかった。
 水は甘い物が多いということもあって、普通の水にした。
 シューズの中敷きは、スーパーフィートがうまく合わず、結局途中で本来の中敷きに戻した。一応持っていって本当によかった。


【スタート〜浅間峠(第一関門22.66k地点まで)】
 天気予報でも晴れるはずだった天候は曇りのまま。晴れる気配はあまりない。山はガスがかかっており、多分山の中はガスで雨に近い状態であることが見ただけでわかる。まあ台風も過ぎて、そんなに強い雨はあり得ないだろうとは思ったのだが…。
 スタート時間が迫り、中学校の校庭に並ぶ。スタートの並びは自分が予想するタイムのプラカード近くに並ぶのだが、まったく無視してタイム10時間・ほとんど一番前に並ぶ。スタート直後の混雑の中、後ろから追い越していくのは、かなり体力を消耗してしまうからだ。前に並ぶと序盤はそれだけで好位置をキープできる。アドベンチャーレースプロの田中選手はすぐ前にいたが、今年は大会連覇している石川選手、今年出るはずだった鏑木選手はどうも出場していないようだ。
 午後1時予定通り、五日市中学校をスタート。今思い出すと、準備運動もなにもせずいきなりスタートしていた。結構何持っていくかとか、晴れたらやっぱりシューズは普通のシューズでいきたいとか色々考えていて、ウォーミングアップをすっかり忘れていたようだ。
 最初は、とりあえず周りの波に乗って序盤の舗装道路を進む。舗装道路を走るのは、最初の数キロ、第二関門付近数百メートル、ゴール直前1キロ弱のみである。本格的な登りは今熊神社(506m)へ至る石段から始まる(300m)。


とにかく最初はあせらないことが肝腎だ。登りのための筋肉を温存していきたい。特に最初は登りがほとんどだ。しかし、足の調子はまずまず。徐々にスピードを上げていく。登りは歩き、平地と下りは走っていく。昨日までの雨で路面も湿っているが、かえって土が軟らかくてグリップが効いてくれる。入山峠(600m)では、スタッフが順位を教えてくれる。たしか50位台くらいだったような…。ちょっと速すぎるかもしれない。ここから市道山(775m)、醍醐丸(867m・15k地点)、三国峠(990m・20k地点)と小さな登り下りを繰り返しながら、徐々に高度を上げていく。このあたりは登りがメインで体力的にもかなり消耗する。山は徐々に雲の中に入り、霧雨状態になっている。かなり湿度が高く蒸し暑いため、例年より水を飲む量も多い。走り始めて2時間くらいから1時間半くらいごとにパワージェルでエネルギーも補給していく。このジェルは糖分メインで、腹持ちはよくない。のども渇くので水も必要だ。このあたりからインソールとソックスの摩擦で、両足の親指の痛みがひどくなってくる。やはりシューズに合わなかったか…。調子よく走っていたので、止まりたくはなかったが、このままでは足裏の皮がむけてしまいそうなので、熊倉山(966m)を過ぎたあたりでインソールを元の物に交換する。足に付けていた泥よけのゲイターのゴムをなかなかはずせず、結構時間を食ってしまう。結局5分以上タイムロスして走り再開。しかしどうも足が動かない。急に体がきつくなってくる。まだ昼なのに眠気まで襲ってきた。まだ序盤だというのに、どうしたことか…。やはり飛ばし過ぎか? 休んだことで疲労がどっと出てきたようだ。お尻に近いハムストリングスや内転筋がつってきた。またシューズが重いせいか、脛の前面の筋肉も痛くなってくる。こちらもつる寸前だ。しかし休むとますます動けなくなるのはわかっているので、なんとかだましだまし走り続ける。そのうちに体力が回復してくれることを祈って…。
 第一関門(浅間峠)には4時半くらいに到着(3時間31分47秒・99位)した。疲労はかなり激しい。これで最後まで持つかかなり不安だった。


【浅間峠(第一関門)〜月夜見駐車場(第二関門42,09k地点)まで】
 浅間峠では、スポーツバーを取りだしただけで、休憩はとらない。登りながらスポーツバーをほおばる。これがまた水分が少なくて食べにくい。これも水がないと厳しい。やはり今回のカロリーだけ重視した食料選択は間違いだったようだ。せめてウィダーみたいに口に入りやすいものにしておけばよかった。
 第一関門を過ぎると標高も1000mを越えてくる。ここから第二関門までが最大の難関だ。徐々にあたりも暗くなってきて、ライトを付けるが、ガスのため視界が効かない。登りはともかく、下りで飛ばすことはできない。雨も次第に強くなってきた。ゴアテックスのシューズだけは大正解だったようだ。
 周りを走っている人も一気に減って、ほとんど以後は一人でぽつんと走ることになる。もう少し遅い順位では、夜になると、皆が団子状になって進んでいくのだが、100位以内では、皆一人でどんどん進んでいくので、なかなか人に会うことがないのだ。
 土俵岳(1005m)、丸山(1098m)を越えると、笹藪が続く。坂も緩やかになって、走る場面が多くなる。30k地点を通過。足は重く調子は上がらない。雨もやむ気配はない。この後は三頭山の登りが控えていると思うと心配だ。
 そして西原峠(1160m)からは、三頭山への登りの始まりだ。登りの苦手な私にとって、毎年ここは、かなりの人数に抜かれてしまう一番のウイークポイントでもある。
 しばらく登っていると、案の定後ろからライトがいくつか近づいてきた。今年もやはり抜かれてしまう。しかし、この数人のグループになんとか食らいついていく。いつもならあっという間に置いてゆかれるのだが、なんとか置いていかれない程度にはついてゆける。やはり登りの練習の成果はあったようだ。とにかく前の人についていこうとがんばっていたら、体も徐々になれて、調子も戻ってきた。眠気はもうすっかりなくなり、気力も充実してきたようだ。やはり我慢してきた甲斐があった。それでも長い登りで、脛の前面はつっている状態がずっと続いている。痛みがひどくならないことを祈りながら登り続ける。
 結局、三頭山避難小屋(35k地点)、三頭山頂上(1527m)と最後まで前の集団に付いていくことができた。この長い坂をほとんど追い越されずに登れたのは、本当に夢のようであった。登りが「苦手」から登りは「人並み」くらいにレベルアップした感じである。
 この三頭山山頂がこのレースの最高標高地点であり、レースの中間地点ともいえる場所だ。まだまだ登りもあるが、これからは全体的には下りとなり、何となく一段落ついた気分である。到着時間は7時半くらいだった。
 休むまもなく、頂上から下りに突入。三頭山からはだいたい1時間で第二関門に到着できるはずだ。雨は降り続いていたが、シューズが新しいせいか、グリップが十分に効いてくれる。一気に鞘口峠(1140m)まで高低差400mを下る。足元がよく見えないのでもちろん安全運転だ。ガスは晴れてるところも部分的にはあったが、全体的にはかかっており、ひどいところは、1m先くらいしかみえない。体の調子は、三頭山の登りからの好調さが続いている。はじめに来た疲労を超えて本調子になってきた。風張峠(1170m)も越えて、しばらく進むと道路に出る。すぐまた山道に戻るが、これはもうすぐ第二関門の印である。すぐにまた道路に出ると、第二関門の明かりが見えてくる。月夜見駐車場到着:7時間23分27秒・83位。この地点が42.09k。フルマラソンとほぼ同じ距離。しかし、時間はフルマラソンの倍以上かかるのだ。


【月夜見駐車場(第二関門)〜ゴール(71.5k)】
 第二関門は唯一の水分補給ができる場所。リュックをあけてボトルを見ると、2Lはすべて飲み干していた。直前で飲んだ水がちょうど最後の一杯に当たった感じ。こんなに水を飲んだのは、過去8回においても初めての経験。登りでがんばって水分を欲したこと、ジェルやバーなどエネルギー補給時に水が必要だったことが、大量使用につながった。塩分も足りないと感じていたので、水1Lとポカリ0.5Lを混ぜて入れてもらう。それから持ってきたソーセージを少し食べ、小用を足す。先についていたおじさんは、「今年は転んでダメだ。怪我しないうちに棄権するよ」といって、レースをあきらめることを隣の人にしゃべっていた。ちょっと気の毒だったが「こっちはまだ一回も転んでないよ」とこっそりほくそむ。ここでも必要事項を行っただけで、休憩はなし。すぐに出発する。
 ここからは御前山、大岳山と大きなピークが二つあるが、その間は結構平坦な道が続くので、前半の登り下りの繰り返しと比べるとかなり走りやすい。この二つの登りをうまく切り抜けられるかが今年の課題である。去年までは、御前山の登りなどはほとんど進まないような状態でつらかった。はたして今年は…。
 小河内峠(1030m)から御前山(1405m)への登りが始まる。たまに前の人のライトが見えたりするが、ガスですぐに覆われ、ほとんど前がみえない。いったいどれくらい登っていくのかよくわからないというのが、登り苦手の私には精神的に堪えてくる。すねの前面はずっとつったままだ。痛みはひどくなるようでならない。なんとかもちそうだ。後ろの人のライトも下に見えてきた。また追い越されるかと思ったが、ちょっと近づいたと思うとまたそのままの距離が続き、離れたりする。結局はここもあまり抜かれることなく、御前山の山頂に到着。レース後半、後半の山場となる御前山の登りでも、そこそこに歩くことができたことで、ほぼ完全に登りに対する恐怖感は払拭された。またこれなら大岳山の登りもそこそこで行くことができるはずだ。御前山から大ダワに降りてくると、道路を横断するだけだが、また一瞬道路が現れる。スタッフも応援してくれるこのポイントを過ぎるとすぐに50kのポイントとなる。ここからしばらく平坦な道が続く。数キロゆっくりとしたペースで走る。そして大岳山の登り。この登りでは、前に女子選手とそれについているパートナーの男子選手がいたので、後ろにつかせてもらう。女子の5位くらいか?ペースはちょうど同じくらいで、大岳山の鎖場を通過する。大岳山の登りは短く、急な岩場が特徴だ。頂上でまた、小用を足し、下りスタート。登りが急だった分、下りも急坂である。かなり疲労が増し、注意力も落ちてくる時間帯なので、最初は気をつけて下るが、徐々にスピードを上げる。小用を足している間に先に下りていった女子選手に追いつき、一気に抜く。ここからはもう厳しい登りはないと思うと気分も楽で、いつの間にか下る足も軽くなる。しかし、ここで転んでまた腕を痛めるのは避けたいので、調子に乗らないように心をちょっと抑えた。下りが終わり第三関門(58.00k)までの数キロは平坦でほとんど走ることができる。一晩中の雨でかなり道はぬかるんでおり、たまに土にめり込むようにシューズが入ってしまう。水溜りに思いっきり足をつくことも多くなる。でもゴアテックスなので、足の中はまったく平気。シューズが重いのは難点だが、このチョイスは大正解。この間には、道の脇に湧き水があり、飲むことができる。場所を雨とガスで見落としそうになるが、なんとか発見。少し水分補給を行う。そして第三関門到着:10時間36分01秒・62位。第一関門から順調に順位が上がっているが、走っている本人は、そんなに抜いているようには感じられなかった。特に第二関門から第三関門は、上り以外ほとんど一人で走っている感じで、この間20人近くを抜いた感覚はまったくなかった。ここではスタッフの人の手持ちの機械で、チップ計測してもらう。
 この関門から少し登ると御岳山(929m)で、境内を下り、その下の商店街を抜ける。旅館ではまだ夜遅い宴会が続いている声が聞こえる。しばらく走ると、本当に最後のピーク日の出山(902m)の登りへ突入。丸太で作った間隔大き目の階段が足に堪える。しかし苦しむのはこれで最後だと思ってがんばる。この登りの途中が60k地点。あと10kちょっとと思うと、気分的には元気が出てくる。最後のピークはなんなく制覇。頂上でスタッフの声援を受けて下りの階段へ進む。あと10k走るだけだ。ここまでくると中盤は調子良かった足の疲労も激しく、もうゆっくりしたジョグ程度にしか前に進まない。去年は登りがほとんどダメだったその分、最後まで平地と下りは飛ばして走ったが、その走りの半分くらいか。感覚的にはキロ6分くらい。速歩きよりはスピードが出てるくらいである。それでも数人歩いている人を追い抜く。途中から後ろに一人ぴったりとついてきた。足取りから察するに追い越せるくらいの余裕はあると思うのだが、後ろにつく作戦にしたようだ。ガスも相変わらず濃いし、後ろにつくのは非常に楽である。途中ほとんど並走状態にもなるので「先に行きますか?」と尋ねるが、先に行ってくださいとの返事。まあ、こちらはマイペースなのであせらずゆっくり進む。
 晴れているときには、下に町の明かりが見えてくる頃だが、雲の下で何も見えない。しかし、道の脇にフェンスが出てきて、ついに畑も登場。ゴールまではあと少しだ。そして道も舗装とは言いがたいが、コンクリートの道路に。ここからはもう1kくらいか。コンクリートならもう転ぶこともないと思い、最後はペースをあげる。後ろの選手もついてくる。最後数百メートルは普通の舗装道路となり、町の家の間の道路を抜けていく。最後は道路を右折するとゴールが見えてくる。この間で少し後ろの選手との差をあけた。最後100mほどのゆるい下りを走りゴール。今年も無事完走! ずっと後ろについてきた選手と握手。彼・大和田さんは大会初参加でこの成績。とにかく最近は速い人がどんどん出てくる。
スタッフから完走証とTシャツをもらって一息つく。ゴール:12時間19分44秒・55位。
なんとか転ばずにゴールできた。タイムも去年の最高のコンディションのときと比べて15分程しか変わらなかった。昨年までは登りはゆっくり、下りは速くだったが、今年は登り、下りともある程度、イーブンペースでいけた感じだった。


【完走後】
 完走後の楽しみはゴールの後ろでトン汁をもらって飲むこと。大きな椀だが、具は少ない。ちょっと不満だが、一杯飲んで、着替えのため体育館へ戻る。着替えを持って中学校校庭の水道とホースを使ってシャワー代わりとする。ソックスはドロドロ、ゲイターは壊れたので捨てた。軍手は途中脱いだときに片方なくしてしまった。さっぱりしたところで、またトン汁をもらいに行く。本当は一杯だけらしいが、着替えていったので気がつかなかったみたい。さらにおにぎりを食べ、腹ごしらえしたところで体育館へ戻る。まだ体育館の中もガラガラ。自分のシートの上にマットをしき、寝袋に入る。うとうとしながらアロハ氏の帰りを待つ。少し眠った後、ぼっとしているとアロハ氏が到着。ビールをごちそうになる。また腹が減ったので、カップヌードルを買ってきて二人で食べる。それからアロハ氏が仮眠を取っている間、またトン汁をもらって食べた。帰宅後も、その日はやたら腹が減ったので、かなりの量を食べた。12時間ほとんど走りっぱなしで、その間とったエネルギーは1200カロリーだった。終わって次の日は、序盤からつらかったすねと肩に筋肉痛が残ったが、他はほとんどダメージは残らなかった。やはり9回目ということで、体もずいぶん、山の走りに慣れてきたような気がした。
 

大会開場でパンフをもらったが、来年のGWには奥多摩全山100k・24hのチャレンジレースが開催される。東京都の最高峰・雲取山頂も含めたこのレースで、制限時間はハセツネと同じ24時間。完走はぎりぎりといったところか。ちょっとコースをみてびびったが、結局は参加を希望してしまった。まったくこりないなあ。