エクステラジャパン 前日編」  マラソン大会報告


エクステラについて】
エクステラはハワイで始まった自然志向のトライアスロンで、スイム・MTB・トレイルランの3種目からなる競技。世界各地で行われている。日本でも何度か開催されているらしい。今年はトライアスリート白戸太朗氏がプロデューサー。奥日光丸沼で行われる今年の大会は白戸氏の話だと、超難コースということ。この大会で上位入賞すると、マウイ島で行われるエクステラのチャンピオンシップ出場の権利を得られるのだ。
このメイン競技の前日、または翌日に行われるのがスクランブルと呼ばれるトレイルラン。このスクランブルは普通5キロとか10キロらしいが、今回のスクランブルは本格的山岳ランで距離も32k。今回はこのスクランブルに参加した。

●8月28日
【前日・チャンピオンシップ見学】
朝7時、曇り空の中、東京駅からシャトルバスに乗って目的地に向かう。シャトルバスの人数は8人で寂しい限り。私とアロハ氏のほかは、皆今日の昼から行われるチャンピオンシップに出場予定。朝早く出発するのは、このチャンピオンシップを見学するのが目的だ。バスは沼田インターまで高速を使い、そこから国道120号線で40キロほど。丸沼も通り過ぎていくと日光、中禅寺湖いろは坂につながる道路である。120号線は沼田を過ぎると山道となっていく。バスもかなり揺れながら進む。山の天気は悪くガスがはってきている。かなり山を登ってきたところで丸沼が道路の下に見えてくる。道路を下って湖畔の会場に到着。
周りは沼とホテルが1件だけの普段ならとても静かできれいなところであろう。しかし、今日はエクステラのため、音楽が鳴り響き、人(スタッフ・選手)が大勢いる。アートスポーツ、ニューバランスがブースを出している。


昼のチャンピオンシップスタートまで、若干時間があるので、そのあたりをうろうろする。大会の掲示板を見ると気温20度、丸沼の水温は23度。かなり寒そうである。沼の湖畔ではスイム用のブイが立てられているが、ガスが濃くて、見えたり見えなかったりの状況である。大会本部はついにブイを岸の近くに移動する。スイムは短縮になったらしい。ブイが見えないんじゃ、しょうがないね。ブイの移動を指示していた白戸さんとツーショットの写真を撮ってもらう。


そして12時半。チャンピオンシップスタート。
スイムは1200mから600mに短縮された。選手は世界レベルから初心者までばらばらである。特に一人だけ図抜けて速い選手がいる。1周300mの周回2周だけだが、それでも後ろの選手をどんどん周回遅れにしてしまっている。上がってくると会場アナウンスで選手が紹介される。1番の選手はなんとシドニー五輪トライアスロン代表の福井選手。やっぱり速い。その後に湯本選手が続く。
自転車(25k)は丸沼湖畔の自然散策道や湖畔脇のコース。次の日に走ってわかったことだが、本当に道は狭く、アップダウンもあり、山道である。一歩間違えば沼まで転落しそうなところでもある。湖畔脇は岩だらけで進むのも困難なところ(道はない)だ。そんな悪路に選手たちが向かっていく。しかし見学するほうは見えないので、ここで着替えてジョギングの用意をする。自転車の後のラン(10k)のコースを選手に混ざって試走するためである。トップ選手がランに入っていった後で、その後を追っていく。しかしまたこのコースも走れるようなものじゃない。湖畔は岩だらけで一歩間違えば沼に落ちてしまう。そんな道(道はないけど)を進み、森の中へ。この森の中もアップダウンが激しく、さらに進む方向もマーキングをよく見ないとすぐに迷ってしまうようなコース設定。道は狭いので、選手がきたら脇によけて応援する。そんなこんなでやっと道路に出る。道路からは下りでスタートの会場まで進む。このコースが1周5kで選手は2周するが、我々は1周でおしまい。さっさと温泉に向かった。


 夜はホテルの庭で、表彰式をかねたバーベキューパーティ。食料をしこたま腹に詰め込んだ後、表彰式。イベントアナウンサーとエクステラ役員のための通訳までいる、なんか本格的な表彰式。選手も外国人が多いので、それぞれ表彰されるたびに大盛り上がり。日本人だけじゃ絶対こうはならない盛り上がりだ。最後は酔っ払ったエクステラ会長の「マムシーッ!」のわけわからない一言で終了。明日に備えて早寝する。


●8月29日
エクステラジャパン スクランブル奮闘編 激走 負傷!  」  


エクステラスクランブル当日】 ゼッケン42番
スクランブル当日。昨日と同じように霧が濃くかかったままの天候。今日の距離は32kのトレイル。途中白根山山頂2500m以上の標高を通過する。リュックの中にはゴアテックスのカッパもいれて万全の態勢で挑む。走る前は悪天候ということもあって安全走行を誓ったのだが…。


朝7時にホテル前のメイン会場をスタート。最初の数キロは道路、軽いトレイル。途中で補給するのが面倒だと思い、朝食を食べ過ぎ、胃から逆流しそうな勢いで、どうも調子がでない。さらにスキー場の芝生を登り、再び道路へ。ここまでで10k以上進んだだろう。道路わきの第一給水ポイントが見え、そこからついに白根山山頂へ続く、登山道に入る。白根山は火山特有の地形で、岩が多く、2000m以上あるだけあってなかなか道も険しい。今日の参加人数は50人に満たないこともあって、周りに人も少ない。そんな道を進んでいくと前方にアロハ氏を発見。しばし並走した後、前に出る。その後少し平坦な道が続くと山の中に沼が見えてくる。弥陀ヶ池である。さらに少し進むと五色沼が。晴れていたらとてもきれいな風景で白根山山頂もくっきり見えただろう。しかし、濃いガスの中、山の中の沼はなんとも幻想的である。ここを超えると再び登りで、高度も2000mを超えてくる。周りは森林限界を超え、背の低い木がまばらにあるだけである。ガスは相変わらず深く、風は下からものすごい勢いで吹き上げてくる(台風でしたから)。さらに高度が上がるともう火山灰と岩だけの世界である。普通に山登るならこんな日は絶対登りたくないものだが、結構おじさんおばさんたちの登山客は多く、皆色とりどりのカッパを着て山頂をめざしている。そんな脇を「すみません、ご迷惑おかけします」といいながら通過していく。皆嫌な顔もせず、応援してくれるのがとてもうれしかった。かなり山頂に近づいたところで大会スタッフを確認(悪天候の中本当にお疲れ様・一番大変な場所だったことでしょう)。この先を下ってくださいとのこと。本当の山頂手前で下りに突入する。


最初の下りは富士山の山頂から降りるのによく似ている。シューズにはスパッツもつけていたので、石ころが入ってくる心配もなく、とりあえずスピードを上げる。気持ちがいい。とすでにこのとき、頭の中に安全走行の文字は消えてしまっていた。もうアドレナリン全開で、どんどん下る。数人を追い越し、さらに前の人に追いつく。しかしこの人がまた結構早い。下りは絶対得意なだけに速い人がいると、こっちもむきになって追いかける。しばらく追走した後、突然その人が道を譲ってくれる。「ふふ、ついにあきらめたか」と自己満足して、油断していたのだろう、右足をねじって着地。このときはあまり感じていないのだが、この捻挫が後になって効いてくる。またしばらくいくと坂も緩やかになって、走りやすくなる。しかしこの緩やかな坂に来た頃、坂をむきになってオーバーペースで下ってきたための疲労がきていたのだろう、木の根に足が引っかかり、つんのめりになって左手を前に着く形で思いっきり転倒! 何しろスピードがついていたのと、ついた手が土にめり込んで左手一本がブレーキになってしまう。転んだ瞬間は自分でよく見ていて、左手が逆関節に少し曲がり、脱臼すると頭の中で思ったのだが、一歩手前で脱臼はまぬがれたようだ。


このあとすぐ起きて走り始めるが腕のダメージは大きく、転倒前のように走ることができない。しかなたくスピードを落としてゆっくり進む。左腕は脱臼にはならなかったものの、この時点でかなりの重症であることが自覚された。しかしまだゴールまでは10kはある。山の中で棄権するわけにも行かず、安全走行をすっかり忘れていた自分に思いっきり後悔する。ほんとバカです。しかし、走っている間はなんとかなるもので、しばらく行くと傾斜30度のスキー場の芝生の下りに突入。足の長い芝生で、雨のため、たっぷり水を含んでいるから、芝スキーには最適のコンディションを降りていく。前に数人下っているのが見えたが、皆滑って転んで落ちながら下っていくのが見える。ここはさすがに下りが得意でも滑らないでいくのは不可能である。何度か尻をつきながら落ちていく。左手をかばいながらなので大変だ。しかし結構こういう下りはおもしろい。怪我をしてないときにまたチャレンジしたいものだ。
 

この下りの途中にはスタッフが立っていて、道順を指示してくれる。私はまっすぐ下って右に流れてくださいと聞いた。芝生の途中途中には100mか200mごとにマーキングのテープが貼ってあったのだが、数百m進んでもマーキングが出てこない。何しろガスがひどくて、数十mしか見通すことはできず、前方にマーキングは確認できない。前の人も不安になっているようで、道を探している。さっきのスタッフの右に流れていくという言葉から、右側に入る道を探しているようだ。ここで私を含めて3人が集まり、皆で進行方向を探す。下りすぎたかもということで、また登ったりしてここで、20分くらいうろうろする。そのうち女子のトップ選手も追いついてきて6名くらいに増える。アロハ氏もここで再び合流。皆で道を探す。やっとのことで道路横にマーキングを発見。きっとここから右に曲がるんだろうと皆で進むが、なんと行きで走った道路に合流。明らかに道を間違えている。再びマーキングの位置まで戻ってよく見ると、リフトの鉄柱にマーキングを発見。今までのマーキングは、道の真ん中の石に貼っていたので、下ばかり見ていたから発見できなかった。しかしいきなり見上げないと発見できない位置にマーキングは困りものだ。その後地図をよく見て、このスキー場をひたすら降りていくらしいと気づく。アロハ氏は一人でどこか道を探しに行っていなくなってしまう。しばらくいくと行きで登ったスキー場の坂に到達。この道は唯一行きと帰りに合流するところだったので、これで正しいことがわかり皆で安心する。確かにここで道なりに右に流れることになった。その下にやっとスタッフを発見。皆でほっと息をなでおろす。しかしここまで、マーキングは1k以上なかった。アドベンチャーレースだからといってしまえばそれまでだが、ここの前までコースにはマーキングは迷わない程度にしっかりあったのである。地図を見て進むレースなのか、マーキングをもっとはっきりさせるべきなのか、どちらかにしてほしいものだ。ガスで見通しがまったく効かないことも災いした。


 迷っている間、歩いたり、話し合ったりして、体が冷え、とりあえずゴールすればいいやという気持ちになって、気持ちも緩んでしまうと、途端に怪我が痛くなってきた。まず腕が痛い。動かない。右足の捻挫も結構ひどくまともに走れない。とにかくここまでくればあとは丸沼の周りの自然散策路を回るだけである。あと5kくらいと思って、無理せず、道を進む。さっきまで一緒にいた人たちは皆、先に行っている。あとから追ってくる人もなくここでまた一人さびしくゴールを目指す。丸沼を回ってようやくゴール地点から流れている音楽が耳に入ってくる。あと1kくらいのところでアロハ氏が追いつく。一緒に走ることもできず先行してもらう。そしてなんとかゴール。タイムは4時間24分くらい。道に迷っていなければ、4時間は切れたけど、とりあえず今日はゴールできたのでよしとしよう。食べすぎだった胃袋はゴールの頃にはもちろんおさまっていたが、途中は確かに補給なしで完走してしまった。せっかく食料も積んだのに意味がなかった。水は2リットルで少し余った。ガスはずっと張ったままで、山頂では霧雨のように雨が降ったが、途中若干ビニールのヤッケを少しかぶったくらいで、ゴアテックスが必要になるほどの雨は降らなかった。せっかく持っていったのに残念。ゴールの後はすぐに温泉で、汚れを落とす。足やら手やらの擦り傷も結構付いていた。


 後日、病院に行って左腕は剥離骨折していることが判明。2.3週間は左手が使えない不便な日々が続きそうである。幸いにも足は軽い捻挫で、腫れも徐々にひいてきている。何はともあれ、山のレースは安全第一。過信は禁物。油断も大敵である。十分すぎる戒めのレースでした。来年はぜひリベンジしたいものだ。しかし30kのために前泊するのも不経済なので、テントでも持ち込むか。


使用シューズ モントレイル レオナディバイド
リュック:グレゴリー・リアクター
持ち物:ゴアテックスのカッパ上のみ・ビニール簡易ヤッケ・食料・タオル・軍手・水2リットル
※持ち物で使用したのは、水とヤッケのみでした。