第1回 東京トレイルレース(2005年4月30日〜5月1日・制限時間24時間)

kadokichi012005-05-05


●コース 青梅永山公園(スタート)→雷電山→榎峠→高源寺→高水山→岩茸石山→棒の嶺山頂(制限時間4時間)→槙ノ尾山→長尾ノ丸→日向沢ノ峰→蕎麦粒山→一杯水→長沢背稜→酉谷山避難小屋(制限時間7時間)→芋の木ドッケ→雲取山頂→七つ石山避難小屋(制限時間10時間)→鴨沢(制限時間12時間)→大寺山→三頭橋→ムロクボ尾根→三頭山避難小屋(制限時間15時間)→丸山→浅間峠(制限時間18時間)→醍醐丸→和田峠(制限時間20時間)→陣馬山→景信山→城山→大垂水峠(制限時間22時間)→三沢峠→四辻→JR高尾駅前→高尾陵南公園(ゴール・24時間以内)


 走行距離、ハリ天狗さんのスントによる計測では120K超らしい。昭文社の山地図では、走行区間の標準歩行時間を足すと48時間以上。つまり歩行時間の半分を少し切るくらいのスピードでいかなければならない。さらに七つ石の関門は歩行標準時間の0.45。前半はスピードを上げていかなければならない。最難関の関門がここで、とりあえずこの関門突破を目標とした。


●TTRへ向けての練習
4月から毎週末、本コースを走る。
1週目:青梅高水山岳マラソン(3時間程)
2週目:鴨沢〜浅間峠(6時間程)
3週目:武蔵五日市〜三国山(山耐コース)折り返して三国山高尾駅(9時間程)
4週目:さわらびの湯〜棒の嶺〜日向沢ノ峰・往復(4時間程)


●スペック
・ウェア:上:ジッパー付長袖 下:短パン ハイソックス(やぶよけ) その上に普通のランニングソックスを重ねる。
・シューズ:レオナディバイド(モントレイル・普段よりハーフサイズ大きめ)
・食料:おにぎり6個 パワージェル10個 カロリーメイトジェル4個 塩タブ ソーセージ一袋 (それぞれ半分にして、半分は鴨沢デポへ)
・水入れ(3L入るハイドロシステム・最初は2L入れる) ライト(LEDの強力1灯PETZL XP) カッパ 着替え(半袖) 
スタート前の食事:スタート2時間前におにぎり2個 菓子パン2個


 今年から始まったTTR(来年も続けられるのか?)。大会運営など、問題山積みの大会であるが、100K24時間って、走るほうには魅力的な数字。なにがあっても自力下山することを誓って(できれば完走)出場。制限時間の変更などで、完走する人数は30人くらいと予測、自分が入ることはかなり厳しいがやれるところまでやってみようという決意でスタート地点に立つ。一番の難関は七つ石山の関門。とにかく前半はハイペースを保っていかなければならない。当日朝、幸い天気は晴れ。雨だったらどうなっていたことやら。参加人数は160人程。いったいどれだけのサバイバルレースになることだろう。
 スタート前は、前日一緒に宿泊したアロハさん、怪我で欠場したFさんの応援を受けてスタートにたつ。


●スタート〜棒の嶺(制限時間4時間)
 午前6時スタート。第一ウェイブのスタートで、しばらく先頭に立つ。これは気分もいいけど、慣れてないのでちょっと不安。5分も走っていると、後からスタートした有力選手たちが何人も抜いていく。ちょっと安心する。
 アロハさん、Fさんが途中で応援してくれる。気合いが入る。


 棒の嶺の関門は楽だが、そこでどれだけ時間のアドバンテージを取れるかが、その後の走りに影響する。ペースを守って進む。特にこの区間では、難所もなく、そこそこのペースで棒の嶺頂上に到着した。


◆棒の嶺到着:2時間54分(区間:2時間54分) 関門時間までのアドバンテージが1時間できる。


●棒の嶺〜酉谷山
 さてTTRの本番はここから。棒の嶺から日向沢ノ嶺までは、いくつかの急坂がある。さらに槙ノ尾山や長尾ノ丸ピークへのコース案内はあるのかも不安だったが、その不安は的中。槙ノ尾山や長尾ノ丸は道がなく巻いてしまう。多分ほとんどの人が巻いているはずだ。このあたり、大会本部はコースを歩いてさえいないのだ。日向沢ノ峰に出る前の急坂では、かなり息が切れるが、足を緩めるわけにはいかない。今回の目標は少なくても七つ石。ここまでは相当きついはずで、ほとんどの人がこの関門に引っかかると予想していた。気温も高く、ハイペースのため水の消費も多かったが、なんとか一杯水へ到着。水はチョロチョロとでており、パックの中に時間をかけて2Lくらいになるよう入れる。すでにこのあたりから選手はあまり見かけない。登山者も少ない区間で、鳥の声やキツツキが木を叩く音がよく響く。酉谷山手前で女子トップのM選手に追いつく。山耐では1時間近く自分より速い選手。こんなハイペースで体力が持つのか不安になる。酉谷避難小屋では水が出ていたが、一杯水で補給していたので、ここでは補給しなかった。順位は17位くらいだったかな。


◆酉谷避難小屋到着:6時間01分(区間:3時間07分)。まだ1時間のアドバンテージはあるが、この区間だけだと、制限をオーバー。やはり厳しい関門設定だ。


●酉谷山〜雲取山頂〜七つ石〜鴨沢
 酉谷避難小屋を出発すると、また一人旅が続く。もうかなりハイペースが続いており、胸が苦しい。ここまで6時間以上走っているのに腹がまったく減っていないのも悪い兆候だ。暑さと、ハイペースと水の飲みずぎで胃がやられているらしい。無理やりパワージェルを流し込む。この後も胃の調子はよくならず、とにかく数時間ごとにパワージェルやらカロリーメイトを無理やり飲んで、ハンガーノックに気をつけた。途中から男性選手に追いつかれる。しばし話をしながら進む。実はこの選手、ヤフーの掲示板上では、知り合いのM氏。その事実は鴨沢で知ることになる。「リラックスできるくらいペースで進むといいよ」と言われるが一言「無理!」。こっちは限界超えてます。どこまで持つかが問題なのだ。「このペースでいけば七つ石には制限の30分前に着ける」と言われ、それを信じてがんばる。七つ石クリアだけは今日の絶対目標だ。芋の木ドッケ手前、倒木だらけで道がほとんどふさがれているところで、M氏にどんどん離されていく。木の下をくぐろうとして頭を思い切りぶつける。道もよくわからないところで、前に走っている選手がいたこと自体すごくラッキー。そのあとをついていけばいいだけだから。今回はそういうラッキーも結構あった。芋の木ドッケからは、少し緩やかな上りに。M氏は先行して見えない。そして後ろから女子のトップMさんに追い抜かれる。やっぱり速いよなあと再確認。山頂手前の分岐で迷っているMさんに追いつき、山頂までは二人で進む。山頂手前の雲取山荘で水をまた補給。タンクを2Lにする。水は重いがあること自体、精神的に余裕が持てる。そして雲取山頂。最高の天気だ。とりあえず、これ以上の標高に上ることはないと自分に言い聞かせた。山頂のトイレで用を足している間にMさんははるか前に。とにかく前に誰かいるだけで励みにはなる。見失わないように、また追いつこうとしてペースを上げないように彼女を追う。七つ石の長い急坂でははるか前にM氏、Mさん、自分が続く。途中で下を見ると誰も選手はいない。
 七つ石山頂を通過してしばらく下がると、第3関門避難小屋に到着。とにかく今日の第一目標七つ石関門のクリアは果たした。


◆七つ石避難小屋到着9時間21分(区間:3時間20分)制限時間まで40分を残すことができた。次の鴨沢ではアドバンテージは1時間以上に増えるはずだ。小屋の水を一杯飲んで出発する。


 七つ石から鴨沢までは、ひたすら下る。なるべく速く行きたい区間ではあるが、鴨沢からの上りでがんばるために、ある程度スピードは緩めて下る。登山口を下り、道路に出たところで、Mさんに追いつく。Mさんから自販機がある情報を聞き、二人で売店へ。コーラを飲む。疲れたときのコーラは最高だ。Mさんはメッツを飲んでいた。疲労には炭酸でしょう。鴨沢グランド到着は16時35分くらいか。順位は16位だったか。麦茶をもらい、デポで食料を受け取り、テントに腰をおろす。今日はじめての本格的な休憩だ。先にきていたM氏も休んでいる。さてここで受け取ったものは、すべて持って行かねばならない。しかし胃の調子の悪さでおにぎりは3つはリュックに入ったまま。さらにここでジェルのほかおにぎりが3個は重くなるだけ。山の中で、おにぎりの中身だけ捨てても動物たちが食べてくれるだろうが、気が引ける。そこでそばとけんちん汁のエイドを出していたおばさんに頼んで、おにぎり3個を処分してもらう。そばはいただいたが、一口二口で腹はいっぱいだった。ジェルの補給、前半から持っているおにぎり3個、水を補給して再びスタート。先にきて休んでいたM氏より先に出発。


◆鴨沢グランド出発:10時間51分(区間:1時間30分)アドバンテージが増えたのは予想通り。しかし、ここからの上りがまた難関だ。



●鴨沢〜三頭山
 三頭山への上りの前に大寺山を越えなければならない。上りではすぐ後にきたM氏としばし談笑。しかし、実力的には私よりかなり上のM氏。そんな人と一緒に走っている自分がかえって不安になる。実際にはまだ4月で、冬に怪我していたM氏はまったくの練習不足だったらしい。上りは休まずペースを保つ。上りでM氏に先行、大寺山の仏舎利殿を越えて行く。ピークを降りて、三頭橋手前の売店へ出る。ここの自販機でまたコーラ。さっきも飲んだので少し残した。その後橋のたもとのトイレ脇の水道で水補給。ここから和田峠まで水補給はできない。タンクの最大容量3Lを入れる。橋を渡って、後半最大の難関、三頭山までの上りに入る。この上りではM氏・Mさん・私の3人が抜いたり抜かれたり。時間的には徐々に暗くなってくる。ムロクボ尾根からオツネの泣坂と呼ばれる急坂へ。すでに1時間以上、ほとんど上りっぱなしだ。さらに山頂までは1時間程続くだろう。ヘッドライトを付けて進む。一緒に進んでいた二人は次第に後方に。多分後でまた追いつかれると思い、どんどん先行する。頂上直下の階段を上って三頭山山頂へ。夜なので誰もいない。下を見ても二人の明かりも見えない。頂上のベンチに一瞬腰掛けたが、すぐに出発。当分は山耐コースの逆走だ。階段をしばらく下って、三頭山避難小屋へ到着。二人のランナーが休んでいた。順位は11位くらいに上がっている。これは一緒に走っていた二人のほか、鴨沢で私より先にきて、ずっと休んでいた人を置いてきた分だ。


◆三頭山避難小屋到着:13時間57分(区間:3時間06分) 後半のきつい区間をそれなりのペースで走破。少し完走が見えてくる。


●三頭山避難小屋〜浅間峠
 休んでいた二人のランナーの後を追いながら出発。緩やかな下り坂が続き、走りやすい。浅間峠までで、またアドバンテージは増えそうだ。少しずつ完走が見えてきたことで、足の体力温存を考えながら走るようになる。無理は禁物。ゴール前につぶれたら元も子もない。上りに入ると直前を走っている選手はかなり苦しそうだ。ペースがいきなり落ちる。もちろんこちらも苦しい。しかし、まだ少し余裕はあった。前を行く二人の選手は下りは速いが、上りは苦戦している。浅間峠手前くらいでは、いつの間にか二人の選手にも先行して浅間峠に到着した。とりあえず、浅間峠からの上りに備えて小休止する。順位は9位。


◆浅間峠到着:16時間07分(区間:2時間10分) アドバンテージが増える。練習ではここからが長く感じた。多分ここからは長く長く感じることだろう。足はまだ動きそうだ。


●浅間峠〜和田峠
 東屋で休憩していたものの、寒くて5分と休んでいられない。体が冷えないように出発準備をする。係りの人から、今走っている人数は16人と聞く。たったそれだけか。後ろからきた選手も疲労困憊して休んでいる。かなりきつそうだ。試走の感じから和田峠からゴールまでは、最低5時間半、できれば6時間ほしいと思っていた。ここであまり休んでいる暇もない。その時間のことを休んでいる選手に伝えると、「うーん」とうなってしまっていた。かなり限界にきているようだ。
 浅間峠からは熊倉山、三国山、生藤山、醍醐丸とピークが続く。上りでは時々立ち止まったりもするが、基本的なペースは落とさないように上っていく生藤山などは上りよりも下りに注意する。すでに16時間以上、ほとんど休みなしに走っていて、集中力も落ちてきているはずだ。醍醐丸の前の茅丸など小さなピークも堪える。醍醐丸まであと0.7キロの標識が出てきたときは、すぐに到着すると思ったが、なかなか山頂が見えてこない。もう通り過ぎたかと思うくらいのとき、やっと山頂に到着。疲れのため、距離が長く感じる。和田峠までも、練習では楽なところだが、今は違う。ちょっとした上りがつらい。しかしなんとか和田峠に到着した。この区間は誰にも会わなかったが、和田峠では先行していた選手が一人休んでいた。スタッフからお湯を一杯もらった。胃の調子は限界で、冷えてきたこともあって痛み出してきていた。結局後半は1時間ごとにジェルを無理やり飲んでエネルギー補給を続けた。ここで最後の水補給を行う。


和田峠到着:18時間21分(区間:2時間14分)この区間で少しアドバンテージを減らし、ゴールまであと5時間40分。とにかくあとはがんばるだけだ。


和田峠大垂水峠〜ゴール
 和田峠からはすぐに陣馬山頂までの上り。一歩一歩ゆっくり進む。20分ほどで山頂に到着。景信へ向かう。道が色々あるので、間違わないように進む。基本的には下りが多いので楽な区間だ。明王峠、景信頂上の売店(もちろんやっていない)を通過。小仏峠から上りに入るが、その上の売店を城山と勘違い。大垂水峠への分岐点を捜してしまう。城山ではないので分岐があるわけもないのだが、思考力が低下しているので、完全にここを城山だと思っていて、ここで5分ほど右往左往する。このときちょうど進行方向に本部が巻いたであろうテープを発見。直進していけばいいのかと思い、不安ながらも進む。しばらくすると城山の標識が。よかった。自分の勘違いがわかる。電波塔の横を通って、城山を思い出す。今日は運もいいようだ。城山頂上を過ぎたところで、大垂水峠への分岐を無事発見。後は道で迷うこともそんなにないだろう。大垂水までは下り。さわの脇を抜けて国道20号の上を横断。最後のチェックポイントに到着。


大垂水峠到着:21時間くらい(チェックし忘れた。区間:2時間40分くらい)ずいぶん時間がかかっているが、あと3時間あることでゴールを確信。あとは気をつけていくだけだ。


 大垂水からは、南高尾の散策道。ハイキングコースなのだが、小さな上りがいやというほど繰り返される。大洞山のほか、上りの途中、何度も立ち止まる。それでもなんとか三沢峠に到着。草戸山方面に曲がる。ここからは下りだよなと思っているとここも上りが多い。途中の四辻を過ぎてもアップダウンが続く。しかしあたりも明るくなってきて、下に家が見えてくるとあと少し。最後の気力で進む。そしてついに山道を終了。団地の脇に出て、あとはロードだけ。しばらく道路を進むとスタッフの人が道を誘導してくれる。すでに6時を過ぎているので、すっかり明るい。陵南公園までも長く感じたが、誘導のおかげで迷うこともなく、無事ゴールへたどり着いた。あまりに長い1日だった。順位は8位。和田峠で先に出発していた選手は、どこかで抜いたらしい。その記憶さえ確かでなかった。


◆ゴール:23時間32分03秒(区間:2時間32分) 最後はペースがずいぶん落ちた。疲れもあるが、ゴールできるとの安心感もあった。なにはともあれまさかの完走。完走できたのは11人で、トレイル界のトップランナーたちと同じ表彰台に上ることができた。
 終わった後は、M氏(山耐ではいつも年齢別で入賞・今回は完走ならず)、J氏(4位入賞)、H氏(トランスアルプス完走者・今回は完走ならず)などと会話を交わすことができた。アロハさんは朝早くにもかかわらず応援にきてくれた。ありがとうございます。


●レースを終わって
 今回完走の要因は、事前の下見練習がしっかりできたことが一番大きい。実際には私よりもっと実力のある人はたくさんいたが、4月のこの時期に調整ができていた人はほとんどいなかったようだ。試走では後半部分を主に行ったが、これでだいたいの時間を予測できたことで精神的な余裕があった。前半のハイペースを保てたことは自分でも驚き。よくもったものだと思う。


 胃の調子が悪かったのは、予想外だったが後半は1時間ごとにジェルを飲んでハンガーノックを予防した。体重は3キロ減っていた。固形物は鴨沢エイドでそばを一口食べただけだった。


 大きいシューズの効果は微妙である。確かに後半になっても足先に余裕はあったが、逆に中で足が動いて安定しなかった。爪が死んでしまったりするよりはよかった。
 翌日会社に行くため、革靴を履いたら、革靴が小さい。足はかなり大きくなっていた。筋肉痛もひどかったが、ともに2,3日で回復した。